
通常、消費者金融などでお金を借りる際には、審査を行った上で賃金法の範囲内で利息を設定して、指定期日までに返済する契約を交わします。しかし、法を無視して営業を行うヤミ金融業者の中には、契約書を交わさない上に、お金を貸し出す際に担保や見返りを要求するところもあります。ヤミ金融で借り入れをする際は注意が必要です。
見返りを要求されたケースの例として、2015年の2月に起きた事件が挙げられます。これは、ヤミ金融業者を利用していた多重債務者が、借金返済のために借り入れを行おうとしたところ、消費者名義のキャッシュカードを見返りに求められたという内容です。
この事件では、ヤミ金融業者が消費者から取得したキャッシュカードを利用して詐欺をはたらこうとした際に、事件が発覚し、口座が凍結されたと報道されています。キャッシュカードの譲渡は、このように犯罪利用されてしまうリスクがあるのはもちろんですが、それだけでなく、さまざまな問題へと発展してしまう可能性があるため、絶対に行ってはなりません。
キャッシュカードの譲渡は自分も罰せられる可能性がある
ヤミ金融が詐欺を働くために利用する口座を獲得する目的で、消費者にキャッシュカードや通帳を要求するケースは少なくありません。実際に、2014年の11月にも同様のケースで、消費者がキャッシュカードを渡していたことが発覚したケースも報告されています。キャッシュカードを強引に奪うことは当然恐喝罪に該当するため、ヤミ金融業者が逮捕されることは間違いありません。
ところが、キャッシュカードの譲渡は、ヤミ金融だけでなく譲渡した側が罪に問われてしまうかもしれません。2006年に成立したキャッシュカードの詐欺利用を防ぐために「預金口座等の不正利用防止法」を施行したためです。
この法律では、正当な理由なくキャッシュカードの譲渡をした人間は、1年以下の懲役もしくは100万円の罰金に処せられることが定められています。正当な理由とは金融機関との取引での場面を想定していますが、ヤミ金融業者は法律で認められていない違法な業者です。そのため、正当な理由と認められず、被害者なのにもかかわらず罰せられてしまいます。
ヤミ金融業者がクレジットカードを要求するケースも

ヤミ金融業者が、キャッシュカードや口座ではなく、クレジットカードの譲渡を要求するケースもあります。これは、返済日にお金が用意できなかったり、さらなる借り入れをしようとしたりする際に用いられる手段で、ヤミ金融業者が知らないうちに無理やり現金化を行うこともあるため危険です。
業者が勝手に現金化したお金は、返済に充てられたり借入金として一部が手渡されたりします。消費者は、一時的に資金を得ることはできるため安心するでしょう。ところが、クレジットカード会社から請求書が届くと、カードの譲渡でお金を得たわけではないことに気が付きます。これでは、借金をしたのと変わりません。
さらに、現金化がどれくらいの換金率で、いくら利用されたのかもヤミの中です。借金返済額や借入希望額よりも多くの利用をされていれば、二重でお金を取られていることになってしまいますから、大変不利な取引となってしまうでしょう。自分で現金化業者を利用してお金を準備した方が、明らかに得になるはずです。
個人情報を不正取得されるリスクも
さらに、ヤミ金融業者へクレジットカードを渡すと、個人情報を不正取得されてしまう恐れもあります。カード会社のWEBサービスにアクセスするためのIDやパスワードがわかれば請求情報などから、住所が特定できるためです。こうなれば、DMが自宅に届くようになったり、情報欄から電話番号を割り出して、恐喝の電話がかかるリスクも高くなってしまいます。
さらに、スキミングによって不正利用を繰り返されてしまったりする危険性もあります。いずれの作業も数分で完了してしまうので、すぐにカードを返してもらっても、情報が盗み取られている可能性は否定できません。
銀行やカード会社では対応してくれないケースも
万が一、こうしてキャッシュカードや通帳、クレジットカードをヤミ金融業者へ手渡してしまった場合には、ただちに銀行やカード会社といった発行元に連絡をしましょう。口座凍結・利用停止の手続きをすれば、その後の被害を抑えられるためです。
しかし、抜き取られた個人情報がさらに転売されてしまった場合には、住所特定による2次被害への抑止は限定的です。警察に被害届を出そうにも、不正利用防止法に抵触してしまうため、自分が逮捕されてしまう危険性もあるかもしれません。
カードの管理は自分で責任を持って行おう
消費者金融や銀行でお金を借りることのできない多重債務者が、ヤミ金融を利用することは現実として起こりうることです。しかし、ヤミ金融業者に要求されて、クレジットカードを渡せば、悪用されてしまうかもしれません。さまざまなリスクが考えられるので、くれぐれも自身の手できちんと管理するようにしましょう。
また、ヤミ金融が利用する現金化業者は、横のつながりがあることがほとんど。異常な換金率で取引を行う悪徳業者で、必要以上の利用額が使われてしまっている可能性が高いでしょう。クレジットカードで現金化を行う際には、インターネットの比較サイトで自ら探した上で、優良な現金化業者を利用するべきです。